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宇宙創成 .3

東洋医学には部品を取り替えるなどといった馬鹿げた発想はない。東洋医学は人体を一種の宇宙と見做しているので、調和すなわちバランスが最も重要だと考えている。病気も患部も征服すべき対象ではなく、人体の調和を取り戻すことによって治癒されるべきものと考えている。

日本には飛鳥時代に東洋医学が中国から入ってきた。それが独自の発達を遂げ、長い歴史の中で日本医学みたいなものになっていた。しかし明治に入ると政府はヨーロッパから入ってきた西洋医学を学んだ者のみに医師の資格を与え、日本医学を学んだ者には医師の資格を与えなかった。そのため伝統の医療を行なってきた医師たちは医療行為が行なえなくなってしまった。

問題はそれだけではない。西洋医学を取り入れる際に西洋人の人間観、宇宙観までも一緒に受け入れてしまったのだ。そのため西洋医学に洗脳された医者たちは、欧米人と同じく人体を複雑な機械と見做すようになってしまった。こうして一般の庶民は欧米人の考えに洗脳された医者のいる病院にしか行けなくなり、それらの医者と同じように西洋医療とその考え方を受け入れざるを得なくなった。

このように西洋医学は欧米人の考え方を顕著に表したものであり、人間観、宇宙観はもとより、宇宙創成に関する考えとも深くかかわっていて、本来の日本人の考えとは大きく異なっているのだが、明治以降一般庶民はそうした考えに馴染むよう強いられてきた。

ではいったい何が望ましいのだろう。私は医療技術をはじめ欧米の技術一般が良くないと言うつもりはない。問題はその技術を支える考え方とその用い方だと思う。これはどういうことかと言うと、現代のテクノロジーは様々な便利なものを生み出したが、同時に地球環境破壊という結果も生み出した。言い換えれば便利にはなったが、自分たちの生きる土台を失いつつあると言える。

欧米で始まった技術革新は便利さは生み出したが、べつに幸福を生み出したわけではない。東洋が持つ心の文化は便利さよりも人が幸せであるための方策を追求してきた。それは自然や宇宇宙が絶妙な調和によって成り立っているという認識の上に成り立っており、人も全体の一部であって、調和の内に平安や幸せがあるという発想だ。そこには自然を征服し他の生き物を支配するといった、独り勝ちを是とする欧米的な考えは微塵もない。

自然との調和イメージ私が望ましいと思うのは、欧米の技術を東洋的な考えの基に利用することだ。目先の便利さを追求するのではなく、自然との調和という範囲内での技術の利用を考えるべきだと思う。多くの日本人はそんなことは分かっているが今更そんなことを言っても実現するはずはない、と言うかも知れない。しかし果たしてそうだろうか。

解決の第一歩は強すぎる我(が)を捨てることだと思う。自分が強者となり、他に勝とうとするのはいかにも欧米的な発想であり、弱肉強食という言葉で表わされる誤った考えだ。百獣の王ライオンが独り勝ちして増え続け、すべての草食動物を食い尽くすということは起こっていない。そんなことをしたらライオン自身食べるものがなくなって自滅してしまう。こうしたことが起こらないのは自然が調和を基本として成り立っているからであり、ライオンは草食動物が増えすぎて草原が砂漠に変わってしまうのを防ぐ役割を担っているだけなのだ。同じように人間界でも、自分だけが勝ち残っても全体の調和は崩れ、最後に自分も自滅する結果となるだろう。そうならないための調和が必要だ。

もし我々の心から我を取り除くことができれば、そのとき初めて真の調和というものが見えてくるのではないか。調和した世界には勝者も敗者もない。これが平安と幸福に向かう道だと思う。

解決の第二は物欲を離れることだと思う。調和を体現した人間は他と較べることがなくなるので、マス・メデイアが作り上げた「かっこいい」、あるいは「高価なもの」などは求めなくなる。かっこいい、高価な、と思うのはテレビや雑誌など、誤った文明の産物に洗脳されているからに他ならない。これは常に他と較べることから生まれてくる発想だ。多くの企業はマス・メデイアを使って物欲を掻き立て、新製品は他と較べてよりかっこいいものだという幻想を植え付けている。そのとおりそれを手に入れて嬉しがっている人もいるが、それによって幸せになるわけではない。

安心や幸せは調和の中にあるのであって、物欲や支配欲や勝利の中にあるのではない。欧米人の発想から生まれた、人間が自然を征服し他の生き物を支配する権利を持つという考えが、今のような破滅的な世界を作り出したのだと思う。これはもとを辿れば聖書にあり、創世記の宇宙観にある。我々はもう一度東洋の、そして日本の発想に立ち返り、真に幸福であるためにはどういう人間観、宇宙観を持たねばならないかを知る必要があると思う。


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